むち打ちでMRI異常なしでも後遺障害の認定を受けるレシピ

むち打ちの検査

むち打ちの検査〜後遺障害申請のためにこれだけはおさえておきたい

むち打ちの検査にはさまざまなものがありますが、ここでは後遺障害の認定に最低限必要となる基本的な検査をご紹介します。あなたのむち打ちがどれだけ重篤だったとしても、後遺障害はあなたの症状に認定されるわけでもありませんし、症状の強さで等級が決定されるわけではありません。

「あぁ、あのとき◯◯の検査を受けていなかった」と、取り返しがつかないことにならないように、よ〜く読んでおいて下さい。

①レントゲン+MRI
②レントゲン+CT

上記の①もしくは②については、むち打ちへの危機感や後遺障害を申請することになった場合、必ず行うようにして下さい。レントゲンもしくはMRI検査すら受けていないとなると、あなたが後遺障害の申請(審査)をしたとき損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所は「レントゲンやMRI検査を受けるほどの事故ではなかった」と判断します。

あなたがそこでどれだけ「いやいや、そんなことはない!こんなに痛いんだぞ!」と泣きながら、あるいは怒りながら訴えたところで、「いや、だって、検査受けてないんでしょ?」と、鼻で笑われて、「後遺障害非該当」のハンコをポンと押しておしまいです。

※「鼻で笑う」「ハンコをポンと押して」は、あなたの心構えをつくるための比喩です。

むち打ちの各検査

むち打ちの検査は、MRIやCT、レントゲンなどの検査をはじめ、それら以外にも主に主治医によって、以下の検査が行われます。仮に、以下の検査すら行わないような病院に通院し続けると、後遺障害診断書を書いてもらう段になって、泣きをみることになりますので、すぐさま転院することをおすすめします。では、簡単にひとつずつご説明します。

スパーリングテスト

これは、誘発テストです。痛みや痺れがあったからといって、これ単体では後遺障害の認定に関係することは、ほぼありません。患者の頭を後ろに傾け(患者は天井を見るような形)その状態で右や左に動かして、肩・腕・手などに痺れや痛みがあるかを確認するテストです。

脊髄から枝別れした神経根は、各頸椎にある椎間孔を通っています。首を後ろに傾け左右に動かすことで、この椎間孔を圧迫し、その間を通る神経根が刺激されるかを確認します。もし神経根が刺激されるのであれば、この程度で痛みが生ずるのはおかしいので、神経根症だろうという予測ができます。

ジャクソンテスト

これもスパーリングテストと同じ誘発テストです。ほとんどの場合、スパーリングテストと1セットで行われます。患者の頭部を後に傾けるところまではスパーリングテストと同じです。ジャクソンテストの場合は、検査する人が、おでこのあたりに両手をのせ、ぐぐっと押して、首をさらに後ろに曲げようと負荷をかけます。そのとき、上肢に痛みが生ずるか否かで神経根症を予測・確認するものです。理屈は、スパーリングテストと同じです。

腱反射テスト

これはスパーリングテストやジャクソンテストと違い、いわゆる「詐病」ができませんので後遺障害申請時には、やや重要視されることがあります。

【腱反射テストの仕組み】
ゴムハンマーで体の特定部位に刺激を与えます。
→この刺激が知覚神経によって伝達されて脊髄に達します。
→脊髄を横断して脊髄灰白質の運動神経細胞に接続します。
→脊髄神経の前根(運動神経)を通り筋肉に達し、加えられた刺激により筋肉運動が起こります。

上記のように、患者の意思とは無関係に反射的に起こるものであることから、腱反射テストは客観性があることに加え、詐病不可なので後遺障害申請時に「やや重要視」されますが、だからといって、これだけで後遺障害に認定されるようなことはありません。

腱反射で異常を示せば、あなたの主治医があなたの治療や検査に真剣に取り組んでくれるかもしれません。なぜなら、ほとんどの場合、少なくとも「むち打ちは時間薬」と思われてしまっているからです。もちろん、はじめから真剣に取り組んでくれる医師もたくさんいますが、そうでない医師もたくさんいるわけです。後遺障害を真剣に考えるあなたからすれば、基本的に医師は後者であると考えておくのが無難です。

徒手筋力検査

Manual Muscle Testing
通称、「MMT」といい、主に医師などの徒手によって筋肉の筋力を判定する検査法です。
基本的には下の6段階で表します。

  • 5(Normal):運動範囲全体に渡って動かすことができる。
  • 4(Good):中等度~強度の徒手抵抗に抗して最終運動域を保持できる。
  • 3(Fair):全体的に動かすことは可能だが、徒手抵抗には抗することができない。
  • 2(Poor):重力の影響を除いた肢位でなら、運動範囲全体、または一部に渡って
          動かすことができる。
  • 1(Trace):筋収縮が目に見える、または触知できるが、関節運動はおこらない。
  • 0(Zero):筋収縮・関節運動は全くおこらない。

3〜0は、かなりひどい状態だと思って下さい。ただし、この検査は詐病が可能なことから、MMT3と診断されても後遺障害認定実務では参考程度にとどまります。しかし、逆にMMT5などとなると、後遺障害の等級認定に悪影響があるという、被害者にとっては実に都合の悪い検査だといえます。

症状にもよりますが、これらの検査はむち打ちで後遺障害の認定を受けるために最低限必要な検査と考えて下さい。


さぁ、むち打ち基礎講座もいよいよ次で最後となります。文字ばかりで少し疲れさせちゃいましたか?そんなときは、「ちょっとしたことを知らないだけで数十万円、あるいは数百万円の損をするのは嫌だ!」と考えて、是非、頑張っていただきたいと思います。次のページでは、後遺障害の弊害ともいえる「むち打ちの敵」についてご説明します。


むち打ちの敵〜保険会社とヤブ医者、あるいは悪徳交通事故専門家